茜:
うわぁ、懐かしいなぁ~!
健一:
この感じ、当時のままですね!
里香:
ここにみんなで泊まって漁港の方へ行ったわよね。
隊長:
喜んでいただけて何よりです。
今日行ったロケ地のどこよりも思い出が詰まった場所だと思います。
浩:
中に入るとあの時に戻れそうな気がする!
茜:
オレ、夕食の後にこっそり食事を翼の所に持ってったなぁ。
里香:
あの時って翼くんは倉庫にいたのよね?
茜:
一回瀬島に見つかりそうになったけど、あの時はドキドキしたな。
健一:
茜ったら、学校の教室でも教卓の下に翼くんと隠れたり、何だかんだ言って翼くんと一緒にいましたよね。
茜:
いや、オレは別に・・・翼の様子をちょっと見に行っただけだよ。
里香:
とか何とか言っちゃってほんとはさ。
茜:
別にどうでもいいだろ。
お前には関係なかったんだから。
浩:
そういえば、倉庫に下りる階段って頭ぶつける人多くなかった?
茜:
オレは階段の下で立ち上がったら頭ぶつけたし、文太は上った時に天井に頭ぶつけたし。
あれってすご~く痛かったんだぞ。
里香:
茜、安心しなさい。
脳みそ空っぽのあんたがぶつけても何の影響もないから。
茜:
何だぁ?
ほんとにお前は人の気分を害させることが好きだな。
今から倉庫に行ってお前も頭を一度ぶつけてきたらどうだ?
それで頭を一度正常に戻してこい!
里香:
あたしの頭はいつだって正常よ!
ってか、ほんとム・カ・ツ・ク~~!!
隊長:
まあまあ、二人とも落ち着いて。
今回はエントランス付近のみですが中を少し見てみましょう。
浩:
そうそう、中はこんな感じだったよね!
健一:
当時は全然意識してませんでしたが、図書室や地域の写真の展示もあるんですね。
隊長:
私、ここの図書室で沼津の歴史を調べたことがあるんです。
皆さんが太陽学園で生活していたのよりずっと前の沼津がどんな姿だったのかを知りたくて。
健一:
僕も土地の歴史や文化に興味があって、太陽学園がある場所の古い地図を何回か見たことあります。
茜:
隊長さんと健一って、気が合いそうだな。
里香:
あたしもそう思うわ。
隊長:
何だかうれしいような、照れるような・・・。
あっ、そうだ!せっかくなので建物の前で集合写真撮りましょう!
茜・健一・里香・浩:
賛成!
(エントランス前)
茜:
そういえば、合宿の時もこの場所で集合写真撮ったよな。
健一:
15年前と同じ場所で再び写真を撮るなんて、思ってもいませんでしたよ。
里香:
あの時の写真と比べてみると面白そうよね。
健一:
きょう沼津に来て、僕たちは少しだけ昔の自分に戻れたような気がします。
茜:
そうだな。
思い出もたくさん話せたし。
里香:
ちょっとケンカもしたけどね。
浩:
ずいぶんたくさんだけどね(笑)
茜:
いいんだよ浩、それがオレたちなんだから。
隊長:
(カメラを構えて)
それじゃあ撮りますよー。
いいですかー?
茜:
ちょっ、隊長さんも写真に入りなよ。
浩:
そうだよ、せっかく一緒に来たんだから。
健一:
隊長さんがいなかったら僕たちここまで来られませんでしたよ。
隊長:
いえいえ、私も皆さんをご案内できて本当に楽しかったです。
あっ、こういうこともあろうかと思って三脚持って来たんですよ。
車の中にあるので取りに行ってきますね。
里香:
(車の中を探している隊長を遠目で見て)
隊長さんって、本当にキッズ・ウォーが好きなのね。
浩:
他にも色々なドラマがあるのに。
キッズ・ウォーに何か思い出があるんだよきっと。
茜:
初対面なのにあんなに親切にしてくれて。
健一:
好きなことをしている時の人って本当に輝いて見えますね。
隊長:
(車から走って戻って)
お待たせしてすみません!
三脚にカメラつけましたのでこれで撮りましょう。
茜:
掛け声はどうしよっか?
浩:
「1たす1は?」だと単純でつまんないし・・・。
健一:
ここはやっぱり、茜の掛け声ですね。
茜:
よし、オレに任せろ!
里香:
そう来なくっちゃ!
浩:
僕も準備バッチリ!
隊長:
・・・なるほど!
わかりました!
浩:
せーのっ!
茜:
キッズ・ウォー ファイナル!
茜・健一・里香・浩・隊長:
ざけんなよ!
(隊長の家)
茜:
キッズ・ウォー ファイナル!
茜・健一・里香・浩・翼・一也:
ざけんなよ!
隊長:
・・・あれ・・・?
DVD見てたらいつの間にか寝ちゃったのか・・・。
今のって特典映像の最後のほうだったよね?
なんか夢でも同じこと言ってたような・・・。
あっ、そろそろ18時か、「ちびまる子ちゃん」でも見ようかな?
(月曜日の朝)
不思議な感覚が残ったまま僕は会社へ向かった。
日曜日に見た夢のことがどうしても気になる。
茜ちゃんたちと沼津に行ったこと、夢にしてはよくできすぎている。
出てきた場所も実際のロケ地とぴったりだ。
間違った場所はひとつも出てこなかった。
でも、すごく気になったことがひとつある。
茜ちゃんが言っていた「インスタ」だ。
もし、あの夢に続きがあるとしたら、茜ちゃんは合宿所の前で撮った写真をInstagramに載せているかもしれない。
あれは夢だったとわかっていながら、僕はスマホでアプリを開き、「キッズ・ウォー」と検索してみた。
いつものようにキッズ・ウォーのドラマを見た人たちがアップしたテレビの画面の写真がたくさん並んでいる。
キッズ・ウォーが長く愛されているということを日々感じる瞬間だ。
いまだにこれほど多くSNSで名前が出てくる昔のドラマは少ないと思う。
画面をしばらくスクロールすると見覚えのある写真があった。
写真の持ち主が誰なのか、そして映っている5人が誰なのかもすぐに分かった。
でも、どうして・・・?
この世界の、一体どこにいるんだ・・・?
(とある水曜日)
あの夢の記憶がほとんど薄れてきたころ、久々に名古屋を訪れた。
目的はもちろん、キッズ・ウォーのロケ地巡り。
普通なら土日に来るのだが、今回はホテルが安い平日を選んだ。
最初のロケ地は、茜ちゃんたちが通っていた「東にじが丘小学校」。
いつものように、名駅から地下鉄桜通線に乗って高岳駅で降りて歩いて向かう。
時刻は午後3時、ちょうど小学生の下校時刻と重なったようだ。
校門の前で一人の先生が子どもたちを見送っている。
学校の先生というのは本当に大変な仕事だ。
子どもたちが帰った後も遅くまで学校に残っているらしい。
労働環境の問題もあり、志願者が年々減っていくのも無理はない。
そんなことを考えながら校門の前を通り過ぎようとした時、小石につまずいて転びそうになった。
先生:
あの、大丈夫ですか?
隊長:
すみません、大丈夫です。
ご心配なさらずに・・・。
先生:
あれ?
もしかして、隊長さんですか?
隊長:
えっ?
先生:
あっ、突然ごめんなさい。
それに、このしゃべり方じゃ誰だかすぐにわからないですよね?
隊長:
・・・?
先生:
(周りに子どもたちがいないのを見て)
オッス、隊長さん!
元気にしてたか?
隊長:
も、もしかして、茜ちゃん!?
って、どうしてここに?
茜:
見ての通り、小学校の先生です!
隊長:
いやぁ~、まさか茜ちゃんが先生になるとは。
しかもここの小学校に配属だなんて偶然じゃありませんか?
茜:
最初はびっくりしましたよ。
まさか自分の通っていた小学校で教えることになるとは。
あっ、向こうから歩いてくる4人、私のクラスの子なんです。
真奈(まな)ちゃん、達弘(たつひろ)くん、汐里(しおり)ちゃん、匠真(たくま)くん、さようなら。
真奈:
オーッス。
茜:
ちょっと、真奈さん。
「オーッス」じゃなくて「さようなら」でしょ?
達弘:
先生さようなら。
あしたの朝、委員会のことで提案があるんですけど、いいですか?
茜:
ええ、もちろん!
達弘君の提案、先生楽しみにしてるね。
汐里:
先生、あたし公園でゴミ拾いしてから帰ります。
茜:
汐里ちゃんはいつも感心ね。
頑張って!先生も今度手伝うね!
匠真:
先生、きょうの給食のカレー、おいしかった。
あしたの給食も楽しみだな~。
茜:
匠真くんはいつも食べることばっかりね(笑)
宿題もちゃんとやるのよ。
隊長:
何だかみんな昔の茜ちゃん、健一くん、里香ちゃん、浩くんみたいですね。
茜:
まあ、似てるところも似てない所もあるかな?
真奈ちゃんと汐里ちゃんはとっても仲良しで、まるで姉妹みたい。
達弘くんは真面目な子で、クラス委員でみんなのお手本。
匠真くんは食いしん坊だけど、いじめられている子を守るやさしい子。
4人を見てると昔の自分を時々思い出します。
隊長:
いやぁ、茜ちゃんに会えて本当によかったです。
ドラマの世界に自分がいるようで夢みたいです。
茜:
こちらこそ隊長さんにまた会えてうれしいです。
隊長:
・・・?
また・・・?
茜:
ほら、この前一緒に沼津行きましたよね?
あの時の写真、大切にとってありますよ。
隊長:
もしかして、合宿所の前で撮った・・・。
茜:
はい、私の宝物です!
隊長さん、またここに来てくださいね。
私、よく下校時間に校門指導してるんです。
隊長:
もちろんですよ。
お休みの日にご飯でも一緒に食べに行きましょう。
茜:
もちろん、健一、里香、浩も連れて。
隊長:
茜ちゃん、今日は会えてうれしかったです。
茜:
楽しんでくださいね、ロケ地巡り。
僕は小さく会釈をしてその場を後にした。
次に向かうのは隣の山吹谷公園だ。
少し歩いたところで振り返ると、低学年の女の子が茜ちゃんと話しているのが見えた。
きっと先生のことが大好きな子なんだろう。
手に花を持ってニコニコしながら先生の顔を見上げている。
その子がおじぎをした後、元気のよい声が聞こえてきた。
「さようなら、紺野先生!」
再び歩き出した時、また小石につまずいてしまった。
茜ちゃんに、見られちゃったかな?
木の葉が揺れる音だけが、通学路に聞こえていた。
<おわり>
※このストーリーはフィクションです。
<あとがき>
最後までお読みいただきありがとうございました。
この物語は、「キッズ・ウォーのロケ地紹介」と「大人になったキッズ・ウォーの登場人物」の2つを大きな柱としてつくりました。
これまでの名古屋編、長野編と同様に「相変わらずあり得ない展開だったな~」と感じた方も多いかもしれませんが、素人の作品ですのでご容赦ください。
ストーリーを書いていく中で大切にしたことは、登場人物の特徴を出すことに加え、「昔はなかったものを含める」ということです。
沼津編では、茜がInstagramのアカウントを持っているという設定を取り入れました。
キッズ・ウォー放送当時にはなかったものですが、今では世界中で多くの人が使っているSNSです。
SNSがあるからこそ、同じドラマが好きな人同士がつながったり、新しい発見を広く共有することができるようになりました。
こうした「今ではあたりまえにあるもの」をセリフに入れることで、茜たちが大人になったということを間接的に表現しました。
沼津のロケ地はどれも少ししか出てこない場所ですから、長野編と同様にロケ地の紹介をするセリフを考えるのが大変でした。名古屋編の場合は、何度も出てきたロケ地が多かったため「あんなこともこんなこともあったよね?」というセリフが作りやすいのですが、長野や沼津ではそうはいかないのが現実です。
今回は、隊長が夢の中で茜たちのロケ地を案内しているという内容にしました。
でも、合宿所の前で撮った記念写真が夢から覚めた後もSNSで見ることができるという不思議なことが起こりました。
そして別の日、隊長は小学校の先生になった茜と再会します。
この時、茜と隊長が現実世界にいたかキッズ・ウォーの世界にいたかは皆さんの想像にお任せします。
なお、茜が小学校の先生になったという設定は、2019年11月に浩役の金澤匠さんにインタビューを実施し、20年後のキッズ・ウォーを語っていただいた内容から着想を得ました。
この沼津編で、「もし探索隊長が大人になった今井家4きょうだいにロケ地を案内したら」(もしロケ)シリーズは終了です。
読みにくい場面、つまらない場面も多かったと思いますが、最後まで読んでいただいたことに感謝申し上げます。
他の記事でロケ地のことにとどまらず、色々な情報を皆さんにお届けしたいと考えております。
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